NEWS 新着情報

日本語教師コラム「漢字」を勝手に作ってもいい?

「漢字」を勝手に作ってもいい?  ~国字と創作漢字~

 

突然ですが、次の漢字の中に一つ仲間外れ(性質の異なる漢字)があります。

理由と合わせて、一つ選んでいただけますか。

  1. 働   b. 峠   c. 粟   d. 畑   e. 辻

 

正解は、「c. 粟」です。

実は、上記の中で中国生まれの漢字は「粟」だけで、他の4つは日本生まれの漢字です。

 

中国「以外」の国や地域で生まれた漢字は「国字(こくじ)」と呼ばれます。

「働」「峠」「畑」「辻」は、いずれも日本生まれの国字です。

 

 

続いて第2問ですが、次の文字は、何を表しているでしょうか。

沒・𠄩𠀧𦊚𠄼𦒹𦉱𠔭𠃩𨒒

 

正解は、「1~10までの数」です。

ただ、これは日本や中国で使われている漢数字の旧字体というわけではありません。𡨸(チュノム)と呼ばれる、ベトナムの国字です。

 

 

最後に第3問ですが、「最も画数の多い漢字」は何でしょうか。

 

こちらから問いかけておいて恐縮ですが、この質問に対しては「答えられない」としか言えないのではないかと、個人的には思います。

 

ちなみに、義務教育で学習する漢字で最も画数の多いものは「鬱(うつ)」で29画です。

漢字検定配当漢字(漢字検定の出題範囲に含まれている漢字)で最も画数の多いものは「麤(そ)」で33画です。

 

ただ、「世の中にある全ての漢字」で画数が最も多いものとなると、答えが難しくなります。

数年前の話ですが、次のような「漢字」が一部で話題になりました。

kanji

この「漢字」は108画で、読み方は「ぼんのう」だそうです。

画数の面では「鬱」も「麤」も大きく上回りますが、これは「創作漢字」と呼ばれるもので、近年になって新たに作られたものです。

 

こういった創作漢字を「漢字」として認めてしまうと、例えば「一」という漢字を縦横に10,000個並べて「これは『いちまん』という漢字です」と言ってしまえば10,000画の漢字が作れるわけですし、同じ方法で10,001画・10,002画‥‥の漢字も作れます。

 

それでは創作漢字は「漢字」として認めるべきではないのでしょうか。

 

私たちが普段目にする漢字は、元をたどれば全て「いつか・どこかで・誰かが」作ったものであり、「粟」も「畑」も、作られた時期や場所が異なるだけで、「誰かが作った漢字」であることに変わりはありません。

 

言葉を換えると「全ての漢字は創作漢字である」ということです。

 

「創作漢字コンテスト」というものが、産経新聞社主催・文化庁後援で2010年から毎年開催されています。

このコンテストのキャッチコピーは「100年後まで残る漢字を作ってみませんか」との事なのですが、私たちが普段目にする漢字は、100年はもちろん、何百年・何千年単位で淘汰されることなく生き残ってきた創作漢字であると捉えることができるのかも知れません。