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謙譲語むずかしすぎ問題
謙譲語むずかしすぎ問題
2007年2月2日に文化庁(文化審議会)から「敬語の指針」なるものが発表されました。
この指針は現在でも話題に上る有名なものなのですが、20年近くも前に発表された指針がなぜ現在でも話題に上るのかと言うと、その中で「5種類の敬語」という考え方が示されていたためです。
敬語を3つに分類するパターン(尊敬語・謙譲語・丁寧語)や4つに分類するパターン(尊敬語・謙譲語・丁寧語・美化語)はご存じの方もいらっしゃるかも知れませんが、「敬語の指針」では、さらに「謙譲語」がⅠとⅡの2つに分割されて5種類となっています。
文化庁による「謙譲語Ⅰ」と「謙譲語Ⅱ」の説明は次のようなものです。
謙譲語Ⅰ 自分側から相手側又は第三者に向かう行為・ものごとなどについて、その向かう先の人物を立てて述べるもの
(「伺う」「申し上げる」「お目に掛かる」「差し上げる」など)
謙譲語Ⅱ 自分側の行為・ものごとなどを、話や文章の相手に対して丁重に述べるもの
(「参る」「申す」「いたす」「おる」など)
この説明だけではあまりにも情報不足なので、例を挙げて考えてみたいと思います。
「先生のところへ伺います」は自然ですが、「弟のところへ伺います」は不自然な感じがします。
実は「伺います」は、話している相手ではなく、話の中の人物(話題に上っている人物)に向けて敬意を示す言葉だからです。
一方で、「先生のところへ参ります」「弟のところへ参ります」は、どちらも自然な感じがします。
「参ります」は、「伺います」とは異なり、話の中の人物ではなく、話している相手に向けて敬意を示す言葉だからです。
ちなみに、「話の中の人物」に向けた敬語を「素材敬語」、「話している相手」に向けた敬語を「対者(たいしゃ)敬語」と言います。
ここまで来てようやく結論なのですが、「謙譲語Ⅰ」と「謙譲語Ⅱ」の違いとは、「素材敬語」と「対者敬語」の違いを意味しているのでした。
「同じ謙譲語でも、使う言葉によって『誰に向けた敬意か』が異なる」‥一度この事を知ってしまうと、今度は逆に「伺います」と「参ります」が、今まで同じカテゴリーに含まれていた事の方が気持ち悪く思えてきます。
「謙譲語を2つに分けましょう!」と最初に言った人も、きっとそのような気持ちだったのではないかと思います。
まだ出会ったことはありませんが、日本語を学ぶ外国人で、上記の違いを理解して謙譲語を使っている人にもし出会うことがあったら、日本語を話す者の一人として、いくら敬服してもし足りない気持ちでいっぱいになるのではないかと思います。